オーシャンパドラー金子ケニーと RovR RollR 45。

オーシャンパドラー金子ケニーと RovR RollR 45。

「海に出る生活を手に入れると、絶対に生活が豊かになる。どんな悩みがあっても朝海に出るとリセットされる。沖5kmに出たら、嫌なことも忘れて、自然に還れる感覚になります。」

葉山を拠点に活動するプロオーシャンパドラー、金子ケニーさん。SUP全日本チャンピオン3度、アジアチャンピオン、世界最高峰のカヌーレース「Molokai Solo」への挑戦。輝かしいキャリアの裏側にある哲学は、一貫してシンプルだ。「海に出る人を増やすこと」。

今回、アメリカ・コロラド発のクーラーボックスブランド「RovR PRODUCTS」の「RollR 45」をお届けし、実際にフィールドで使ってもらった。製品の話だけにとどまらず、彼の海への向き合い方、道具を選ぶ理由、葉山という場所を選んだ理由、そしてクーラーボックスとの原体験まで、じっくりと話を聞いた。


Chapter 01波打ち際の先へ。

サーフィンではなく、パドルスポーツを選んだ理由。

ケニーさんは幼少期から青年期をカリフォルニア州で過ごした。幼少期までは、毎朝サーフィンをする生活が続いた。

帰国後、戻って最初に感じたのは違和感だった。カリフォルニアでは当たり前だった「毎日海に出る」という感覚が、日本では簡単ではないことに気づく。

❘ なぜサーフィンではなくパドルスポーツなのか?

Qケニーさんがサーフィンではなくパドルスポーツにシフトされた理由って、何かあるんですか?

単純に、日本って波が安定しないんです。湘南エリアは特に。僕がサーフィンをずっとしていたカリフォルニアはすごく空いていて、波も常に良かったんですが、日本だと波がない日もあるし混んでもいます。毎日海に出ることが難しいんです。

そうなった時に、「その海感を味わうためには沖に出て、割れないうねり、沖のうねりに乗るしかない」と思って、パドルスポーツを始めました。

サーフィンは“波と向き合うスポーツ”で、その魅力は波のある場所に凝縮されています。一方で、パドルスポーツは海そのものをフィールドにできる。海岸線を眺めながら漕いだり、沖へ出たり、静かな入り江を楽しんだりと、海全体を自由に味わえるんです。それが一番好きな理由ですね。

Chapter 02海のパズル。

ダウンウインドという遊びの哲学。

ダウンウインドとは

風(ウインド)を背に受けながら、波やうねりのエネルギーに乗って海上を漕ぎ進むパドルスポーツ。SUPやアウトリガーカヌーで行われ、風とうねりが生み出す自然のエネルギーを読んで最大限に活用する技術が求められる。コースによっては時速25kmを超えるスピードが出ることもある。サーフィンが「波が立つ場所」を必要とするのに対し、ダウンウインドは風やうねりがあればどこの海でも楽しめるのが特徴。

❘ ダウンウインドの魅力は?

Qダウンウインドの魅力についても聞かせてもらえますか?

うねりは、海上どこかで風が吹いていれば必ず届くんですよ。

陸の波は地形から生まれて、何千キロ離れたところから移動してきたうねりの最終地点。サーフィンはその水の動きに乗るわけですが、沖に行くと話は変わります。沖においては、うねりは「水の流れ」ではなく「エネルギー」に近いです。

波動や周波数と同じで、荒れている時ほどエネルギーが満ち溢れています。ダウンウインドはそのエネルギーがいろんな方向から来る風などを読んで、パズルのように組み立てながら進んでいく遊びです。自然とどう調和できるかが全てで、うまく乗れると時速25kmほど出ます。「水が動いているのに乗るんじゃなくて、エネルギーに乗っている」そんな感覚です。

Qエネルギーというのは、風の動きを読みながら力を調和していくということですか?

そうです。例えば、近くの風は西から吹いている。でも何百km先では台風が来ていて、そのうねりは反対方向から届いています。その風波とうねりがぶつかり合って、さらに散らばっていろんな方向に行くんですよ。それを読んでつなげていく感じです。

海の上でパズルを解くようなスポーツですし、スキーで言うとずっとダウンヒルをしているような感覚です。「海を楽しむ最高の遊び」だと思っています。

Q沖でどうやって風を読んでいくんですか?

「感じる」ことが一番重要です。見て判断するよりも、体で感じて自然と調和できるかどうかが全てだと思っています。

だからダウンウインドしている時は波を見返さないんですよ。ずっと前を向いて、「前の面をどう感じるか」で判断しています。そういう意味では、なかなか他にはないスポーツかもしれないですね。

Chapter 03世界一になるために、競技を続けていたわけではない。

競技時代と今。変わらない、たったひとつの理由。

全日本チャンピオン4度。アジアチャンピオン。Molokai 2 Oahu 3位。輝かしい競技キャリアを持つケニーさんが、競技の本当の目的について打ち明けてくれた。

❘ 競技に打ち込んでいた本当の理由

Q競技時代と今とで、パドルスポーツへの考え方は変わりましたか?

SUPの競技でプロアスリートとして活動していた理由と、今ブランドやショップ経営をやっている理由は、実は変わらないんです。実は、「世界一になるために競技をやっていたわけじゃない」んです。全日本で優勝したいとか、そういう気持ちはもちろんありましたし、その瞬間は嬉しい。でも1回優勝してみると分かるんですよ。人生、何も変わらないんです。周りの見る目は変わるけど、翌日起きて鏡を見たら普通に同じ自分で。全日本で最初に優勝した時に「結果ってただの結果だな」と感じました。

「結果のために練習する」ということは、競技活動10年間で一度もなかったです。SUPのレースを始めた一番のきっかけは、当時流行っていたスポーツで一番速くなれば「発言権」と「影響力」が得られると思ったからです。実際にそれがきっかけで今日この特集もできていますし、パタゴニアのポッドキャストにも繋がっています。「自分が一番知ってほしい海の素晴らしさ」や「海に出ると生活が豊かになる」ということを伝えるために競技をやっていた——それが一番大きな理由です。

❘ 400本のボードと、400人の海

会社を起業したのも、お金持ちになりたいからではありません。例えば年間400本ボードを売ったとしたら、400人が海の魅力を肌で感じることができます。その人たちが友達にその良さを伝えたり、子どもと一緒に遊んだりすると、今まで気にも留めなかった海の気候変化やプラスチックゴミの問題に気づく人がそれだけ増えていくんです。

競技をやっていた時も、会社をやっている今も、そこは何も変わっていません。「世界一になりたい」と思って競技をやっていたことは、あまりないんですよね。

Q影響力を持つことで、自分が伝えていきたいライフスタイルを広げていくということですよね。

「ライフスタイルに取り入れる人を、1人でも多く増えたい」——それがやっていた理由の1つでもあります。もちろん大会で負けたら悔しいし、勝ちたい気持ちもあります。でも今振り返ってみると、やっていた理由はそこじゃなかったなと強く感じますね。

「海に出る生活を手に入れると、絶対に生活が豊かになります」。仕事や私生活でのストレスも、海に出るとちっぽけに感じるんですよ。だから仕事があっても毎日海に出るようにしています。どんな時でも朝海に出るとリセットされますし、沖5kmに出ると、陸の上でのストレスやも、何かを抱えていたとしても、本当に全部関係なくなるんです。毎日そこに触れているとバランスが整う感覚があります。

Chapter 04葉山を選んだ理由。

磯と透明度と、羽田まで45分。世界へ飛ぶための、海辺の拠点。

神奈川兼には茅ヶ崎、辻堂、鎌倉、葉山と複数の海沿いエリアがある。ケニーさんが葉山を選んだのは偶然ではない。プロアスリートとして毎日トレーニングを積み、年に何度も海外遠征へ出る生活にとって、葉山の地形と立地が持つ条件は唯一無二だった。

❘ 海の質:地形がつくる、ダイナミックな水

Q葉山を拠点に選んだ理由を教えてください。

まず「海が綺麗」なんです。茅ヶ崎や辻堂はずっと砂地でだだっ広い海なんですが、葉山に来ると磯が多く水の透明度が全然違います。地形が豊富で海がダイナミックで、複雑な入り江があったりするので、潮の流れやうねりの入り方、岩からの跳ね返りまで含めてトレーニングにも最高の場所です。毎日漕いでいても飽きない海なんですよ。

❘ 利便性:海外レースへの動線と、世界への近さ

あとは交通の便がいいんです。葉山から羽田空港まで車で45分ほどで、海外のレースにもすぐ飛べますし、どこに行くにも近い。年に何度も海外遠征がある生活の中で、この距離感はすごく大事です。

「海が綺麗でトレーニングに最高」で、かつ「世界にもすぐ出られる」——その2つが揃っているのが葉山だったんです。

❘ 葉山の暮らし:海まで1km、夏は自転車で

夏は車で海まで行かないんですよ。自転車です。海まで1kmくらいなので。毎朝5時半から6時半は漕ぎに出て、日中はパタゴニアのポッドキャストの収録をしたり、いろんな方とミーティングしたりタイアップしたり。

競技活動していたらできないようなことを今やっていて、それが自分の哲学や考え方をより多くの人に伝えるためのものになっています。葉山の海があるから、そのリズムが保てているんだと思います。

Chapter 05RovR RollR 45、フィールドへ。

Gear Review|「自転車で海まで引っ張れるクーラーボックスって、なかなかない。」

RovR RollR 45をお渡しし、実際にフィールドで使ってもらった。最初に返ってきたのは、保冷力への率直な驚きだった。

❘ 保冷力:冷凍肉が解凍されないレベル

Q実際にRovRを使ってみてフィードバックをいただけますか?

「保冷力がすごい」ですね。逆に冷凍していたお肉がなかなか解凍されないくらいです(笑)。タイヤも使いやすくて、実際に引っ張ってみたんですが全然いけます。

あと、COOLER SHOCK の保冷剤のおかげもあると思います。

うちのアウトリガーカヌーのクラブが葉山にあるんですが、夏になると南で合宿したりで浜辺でずっと時間を過ごすタイミングがあるんです。そういう時に子どもたちのフルーツとかを入れて浜に持っていく使い方をしようと思っています。普通のクーラーボックスって重くて持ち運びが大変だったり、タイヤがしっかりしていないので全然引っ張れないものが多いんですが、RovRだったら下手したら自転車でも引っ張っていけるんじゃないかというくらい、タイヤがしっかりしています。

❘ バイクキット:夏の葉山スタイルにハマる

RovRには自転車と連結できる「バイクキット」がある。フレームに取り付けて後部に連結し、そのまま引っ張って走れるシステムだ。ケニーさんに伝えると、意外な反応が。

これは面白いですね。うちは夏、車で海まで行かないんですよ。自転車なんです。海まで1kmくらいなので。これがあったら使う機会がめちゃくちゃ増えますね。ぜひ試してみたいです。

❘ 製品情報|RovR RollR 45

Chapter 06クーラーボックスに何を入れるか。

ハワイの駐車場で覚えた原体験と、葉山の夜の海。

道具の使い方は、その人の生き方を映す。ケニーさんにとってクーラーボックスは何を入れる箱か。率直に聞いた。

❘ ハワイの駐車場。練習よりも長かった、あの時間。

Qクーラーボックスに入れて持っていくものがあれば教えてください。

やっぱり「冷えたビール」が最高ですよね。18歳くらいから毎年ハワイにアウトリガーカヌーを漕ぎに行っていたんですが、練習が終わるとみんなトラックの荷台にクーラーボックスを積んでいて、駐車場でみんなでビールを取り出すんです。その駐車場での時間が練習よりも長かったりして(笑)。運動して海から上がって夕日を見ながら飲むビールは最高ですよ。あとは「チップスとサルサ」ですね。カリフォルニア育ちなので(笑)。あとはやっぱり魚介系も外せないです。

❘ 葉山の夜。家族でポキを持って、海へ。

夏はよく夜ごはんを家族で海まで持って行くんですよ。葉山には山の公園がすごく綺麗なところがあって、ポキみたいなのを作って持っていく使い方をよくしますね。

海まで1kmだから自転車でスッと行けて、クーラーに冷たいものを入れてそのまま夜の海でごはんを食べる。バイクキットで引っ張れるなら荷物も増やせるし、次はそれで行くのが楽しみです。

❘ クラブの合宿。子どもたちへのフルーツと、浜辺の時間。

うちのアウトリガーカヌーのクラブが葉山にあるんですが、夏になると南で合宿したりで浜辺でずっと過ごすタイミングがあるんです。そういう時に子どもたちのフルーツとかを入れて持っていく使い方もしたいですね。

普通のクーラーボックスはタイヤがしっかりしていなくて砂浜で引っ張れないものが多いんですが、「RovRのタイヤだったら砂浜でも全然いけます」。重たいものを入れても転がせるから、合宿みたいにみんなで大量に食料を持って浜に行くシーンにはすごく合っていると思います。

 

— 競技でも、経営でも、道具選びでも、金子ケニーさんが動く理由は明確だ。

海に出る人を増やすこと。海を感じる人が増えれば、人生はより豊かになるからだ。

実際にその哲学を今もケニーさん自身で体現したライフスタイルを貫いている。

 

Next ChapterOcean Bottle、そして次の海へ。

ケニーさんとの取り組みは、続く。

RovRに続き、津田商会が取り扱うウォーターボトルブランド「Ocean Bottle」の使用もケニーさんに予定している。Ocean Bottleは、ボトル1本の購入につき海洋プラスチック100本分の回収に充てられる仕組みを持つロンドン発のブランド。「海に出る人を増やすこと」と「海を守ること」を同時に体現するケニーさんの哲学と、深く共鳴するブランドだ。

アウトドアフィールドでの道具から、毎日使うウォーターボトルまで。ジャンルを拡大しながら、海を軸にした様々な取り組みをケニーさんと共に続けていきたいと考えている。

ShopPADDLER

葉山一色に構える、海とパドルのベースキャンプ。

2018年、ケニーさんが葉山一色にオープンしたパドリングショップ「PADDLER」。SUPボードやアウトリガーカヌー用品をはじめ、マリンスポーツに特化したギアやアパレル、海をモチーフにしたアクセサリーまでを取り揃える。単なるギアショップにとどまらず、地域の海好きが集まるコミュニティの場として機能している。

「海に出る入り口をつくること」を競技時代から一貫して追い続けてきたケニーさんにとって、このショップはその哲学を地域で体現する場だ。RovRやOcean Bottleをはじめ、フィールドで本当に使える道具をショップを通じて届けることも、これからの展望のひとつとなっている。

場所:神奈川県三浦郡葉山町堀内1060-1
Instagram:@paddler_official
Club:Ocean Va'a Hayama

PROFILE

金子ケニー

1988年、東京生まれ。幼少期に家族でカリフォルニア州アーバインへ移住し、18歳まで過ごす。帰国後、アウトリガーカヌー・SUPの世界へ。SUP全日本選手権3度優勝(2014・2017・2018年)、2018年アジアチャンピオン、Molokai 2 Oahu 3位。現在は葉山を拠点に、SUP・アウトリガーカヌーブランド「Kokua」を運営しながら、パドリングショップ「PADDLER」を経営。Patagoniaサーフィンアンバサダー。